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スポーツの世界にAI審判が登場?高機能カメラとAIを組み合わせる試み

 

 

近年では、カメラ機能の進化が著しく進んでいます。この技術の進歩に加え、AIの発展も目を見張るものがあり、両者を組み合わせてスポーツ審判の役割を一部担わせる取り組みが行われています。
サッカーにおいては、既にいくつかの大会でAIを用いた判定が実施されており、さらにメジャーリーグでは「ロボット審判」の導入が検討段階に入っています。こうした変化がどのような影響をもたらすのか、日本サッカー協会で審判の指導を担当されている佐藤隆治氏と、メジャーリーグ傘下3Aで審判を務める松田貴士氏にお話を伺いました。
(※2024年3月31日 朝日新聞の記事を参考に要約しています。)

AI導入時代における審判の役割と人間らしさとは

日本サッカー協会の佐藤隆治さんは、「AIの導入が進むと、人間らしさを感じさせる判定が減少する可能性があります」と指摘されています。2018年のワールドカップ(W杯)ロシア大会では初めてビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)が導入され、2022年のカタール大会ではAIを活用した半自動オフサイド判定システムが追加されました。
今後もAIを含むテクノロジーが判定の現場に導入される流れは続いていくでしょう。しかし、どれだけ多くのカメラや人員を増やしても、判定ミスが完全になくなるわけではありません。映像を分析するのは人間であるため、ヒューマンエラーは避けられないのです。ラインを越えたかどうかといった事実の判定はVARに任せられるとしても、選手同士の接触プレーの判定にはどうしても主観が関わります。最終的な判断は、誰かが責任を持って決める必要があり、その役割を審判に委ねているのです。
VARが導入された当初から、審判の決断力などの能力が低下するのではないかという懸念がありました。しかし、逆に判定力が向上するというのが私の考えです。VARを担当する際、さまざまな角度から映像を確認する経験は、実際の試合でのポジショニングに活かされるからです。
審判を指導する立場として私が伝えているのは、「VARはあくまで道具に過ぎない」ということです。映像で確認できるからとVARに頼り切ってしまうと、審判自身の判断が鈍ります。それではピッチに立つ意味がなくなってしまいますし、いっそのこと監督や選手もAIに任せればよいという結論になってしまうでしょう。
審判には試合をマネジメントする役割が求められます。今後もそれは人間でなければできないと信じたいものです。選手やチームの状況を理解した上での、人間らしい判定も必要です。もし全てをVARやAIに任せてしまえば、そんな判定は消え去り、冷淡なものが増えてしまうかもしれません。

サッカーにおける審判の個性と技術革新の狭間で

もしも審判が科学技術に完全に取って代わられる時代が訪れるとしたら、私はそれを望みません。人間の主観をすべて排除してしまったら、サッカーの魅力が失われてしまうでしょう。
VARや精密な映像技術が存在しなかった時代には、審判たちにもそれぞれの個性がありました。しかし、現在では審判やその指導方法もどこか画一的になりつつあり、その変化に対して寂しさを感じています。
VARを担当する審判員は、絶対にミスを許されないという厳しい責任を背負っています。彼らは常に強いプレッシャーとストレスに晒されており、「生きた心地がしない」と口にすることもあるほどです。時代の変化に伴い、審判の仕事はより困難になっていますが、基本的な役割は変わっていません。VARがあろうとなかろうと、最終的には正確な判定を下すことが求められるのです。

自動ボールストライク判定システム(ABS)導入による審判の未来と正確性

メジャーリーグ傘下3Aの審判員である松田貴士さんは、「妨害やスイングに関しては、機械だけに頼るのは難しいのではないでしょうか」と述べています。投球がストライクかどうかを自動で判定する「自動ボールストライク判定システム(ABS)」は「ロボット審判」とも呼ばれ、2022年からメジャーリーグ機構(MLB)傘下の3Aで採用されるようになりました。
このシステムは、MLBの独自プログラムを使用して各選手の身長などを基に決定されたストライクゾーンをもとに、複数の高性能カメラが投球の軌道をキャッチし、それがストライクかどうかを判断する仕組みです。2022年には一部の球場で試験的に導入されましたが、昨年にはすべての30球場に導入されるまでになりました。
ABSが稼働している間は、投球の判定について人間の審判の介入は基本的にありません。投球がキャッチャーのミットに収まった瞬間、事前に録音された人間の声で「ストライク」または「ボール」という判定がイヤホンを通じて球審に即座に伝えられ、球審はそれをコールするだけとなっています。
ABSを導入する主な目的は、投球を正確に判定することです。これまで3Aでは、弾道測定器による判定結果が審判に共有されていませんでしたが、昨シーズンからはデータが提供されるようになり、判定を客観的に検証することが可能となりました。
ABSの導入によって審判の権威がどう変わるかという議論もありますが、野球というスポーツで最も重要なことは正確な判定です。ABSは客観的なデータを活用できるため、私個人としてはその導入に賛成です。

機械判定時代における審判の役割と野球の変化

一方で、審判の役割は非常に多岐にわたっているため、すべてを機械に委ねることはできません。打撃や守備の妨害、スイングをしたかどうかの判断などは、やはり人間の審判の判断が必要とされます。
ABS(自動ボールストライク判定システム)が完全に導入された場合、捕手がミットを動かして際どい球をストライクに見せる「フレーミング技術」は不要となり、優れたキャッチャーの定義そのものが変わってしまうかもしれません。現在はボールゾーンに来た球をミット操作によってストライクと見せる技術が高く評価されていますが、この技術が必要なくなると、捕手はキャッチング技術に長けていなくても、打撃力があり、肩が強ければ十分だという評価基準に変わる可能性があります。こうした変化は、間違いなく野球そのものを変えていくでしょう。
また、SNSの普及によって「誤審だ」という訴えが瞬時に広まり、審判が批判を受けるケースも増えています。機械による判定が導入されることで、こうした心理的な負担も軽減されるのではないかと考えます。