スマートフォンでも高画質な写真が簡単に撮れる現代。撮ってすぐ確認、加工、共有――そのスピード感が求められる一方で、あえて「不便さ」を楽しむインスタントカメラが再注目されています。
プロカメラマンの中でも、「作品の一部をローテク機材で撮る」ことで表現の幅を広げたり、撮影現場の雰囲気づくりに活かす動きが広がっています。
そんな、インスタントカメラの魅力と活用術を、撮り分けの観点からご紹介します。
目次
インスタントカメラの魅力は「偶然」と「一回きり」
フィルムの質感、色のゆらぎ、光の滲み…インスタントカメラは、機械任せにできない不完全さ=味が魅力。ピントの甘さも、構図のズレも、時には思いがけない傑作に変わることがあります。
また、その場でしか生まれない一枚という特性は、撮られる側にとっても特別感を与えます。とくにポートレートやスナップ撮影では、「今、この瞬間を逃したらもう撮れない」という緊張感と楽しさが共存する、独特の空気を生み出します。
撮影現場で“撮り分け”に使う
◇ デジタルとの併用でシーンに変化を
たとえば、ブライダルや成人式の撮影では、メインはミラーレス一眼で構成しつつ、オフショットや控え室風景をインスタントで撮影することで、データには残せない「裏側の記憶」を演出できます。
このような使い分けが、写真集やアルバムに「奥行き」や「意外性」をプラスしてくれるでしょう。
メイン:高精細・構成重視(デジタルカメラ)
サブ:感情・瞬間重視(インスタントカメラ)
クライアント参加型の演出にもおススメ
インスタントカメラは、その場で写真が出てくるワクワク感も魅力のひとつ。被写体となる人やクライアントにカメラを手渡し、自分で撮ってもらうという演出も可能です。
「撮られる」だけでなく「撮る」体験も楽しんでもらうことで、より思い出に残る写真体験になります。
・ウェディングのゲスト撮影
・子どもとのふれあい記録
・家族写真の“セルフショット風”カット
使用する際の注意点と工夫
撮影環境を選ぶ
屋外や明るい場所に向いているものが多く、暗所や逆光には弱い傾向があります。補助光や事前チェックで失敗を防ぎましょう。
構図は思い切りが大切
ファインダーが曖昧な機種もあるため、構図や距離感はざっくりでOK。被写体との“間”を楽しむ気持ちが大切です。
フィルムの扱いに注意
現像不要とはいえ、保管や湿気管理は重要。特に夏場はフィルムの劣化に気をつけて。
どんな場面で活用する?
撮影の合間に撮った一枚が、思わぬ主役になることもあるのがインスタントの醍醐味です。
・ポートレート撮影での“味付け”カットに
・七五三や卒園記念など、子どもの表情を柔らかく引き出したいときに
・撮影会での“おみやげフォト”として
・SNS用の撮影舞台裏の投稿に(“#写ルンですのある現場”など人気)