2024年3月、アメリカで世界初の女性プロスポーツ専用スタジアムが誕生しました。
ミズーリ州カンザスシティにあるCPKCスタジアムで、米女子サッカーリーグ(NWSL)に所属する「KCカレント」の本拠地となっています。
初年度のホームゲームのチケットはすべて完売し、女性専用スタジアムの意義とビジネスとしての可能性を示しました。
米国は女性のプロスポーツに関する理解や環境整備が大変進んでいます。こんなスタジアムなら迫力ある写真が撮れそうですね。日本も追随しなくては!
(※2025年3月8日 朝日新聞の記事を参考に要約しています。)
目次
女子専用スタジアムが生む新たな波が来る
太陽の光を受け、鮮やかに輝く緑の芝。
ピッチと観客席の距離が近く、選手への声援がダイレクトに届きそうです。
カメラを構えたくなること間違いなしですね。
スポーツ界初となる女子専用スタジアム誕生のきっかけは、2019年のサッカー女子ワールドカップ(W杯)でした。
女性の機会均等を推進する米資産運用会社の幹部であり、クラブの共同オーナーでもあるアンジー・ロング氏は、夫とともに開催地フランスで試合を観戦。
性別や年齢を問わず熱狂する観客の姿を目の当たりにし、女子サッカーへの投資を決意しました。
そして2021年10月、総額1億3500万ドル(約202億5000万円)を投じ、世界基準を目指した女子専用施設の建設計画を発表しました。
観客の視点を重視し、すべての座席がピッチから約30メートル以内に配置されるよう設計されています。
女子スポーツへの投資が生んだ成功事例
これまで女子クラブの多くは、男子チームの施設を借りたり共有したりするのが一般的でした。
しかし、女子スポーツに投資し、話題を呼ぶことでファンが楽しめる環境を整えれば、持続可能な経営が可能になるという戦略が取られました。
その戦略は見事に成功しました。
2024年の本拠地での試合はすべて完売し、同年10月の時点でスポンサー企業は約30社に上ります。
クラブのジェミソン社長は、「女子スポーツが利益を生むことが証明され、スポンサーも本気で投資してくれています」と手応えを語ります。
そして、「5年前と比べ、今ではビジネス界も女子スポーツに敬意を払うようになりました。女子スポーツは価値ある資産です」と、その重要性を強調しました。
また、大規模な投資によって選手の意識も高まりました。
専用のロッカールームが完備され、女子選手の骨格や筋肉に特化したトレーニングや回復プログラムが専門家の指導のもとで実施されています。
その結果、2024年シーズンはプレーオフ準決勝まで進出しました。
これぞ女子スポーツの未来を切り開くスタジアムだ!
このスタジアムには、予想以上の効果も生まれています。
整った環境に魅力を感じ、クラブへの移籍を希望する選手やスタッフが急増しました。
また、外国籍選手の口コミによって、国際的な知名度も高まっています。
さらに、多くのクラブオーナーやリーグ関係者が視察に訪れ、このモデルを参考にしようとしています。
しかし、ジェミソン氏は現状に満足していません。
「私たちは世界の[代表例]になりたいですが、[最後の例]にはなりたくありません。女子スポーツへの投資価値をさらに証明していきたいです」と意気込みを語りました。
女子スポーツへの投資が加速する背景は
アメリカでは近年、ジェンダー平等の観点だけでなく、ビジネスとしての可能性を見込み、女子スポーツへの投資が増加しています。
そのきっかけとして、2019年のサッカー女子ワールドカップ(W杯)を挙げる声が多くあります。
国際サッカー連盟(FIFA)によると、この大会は世界で約11億2000万人が視聴しました。
もともと実力が世界トップクラスのアメリカ代表が優勝したことで、メディアでの露出が一気に増え、新たなスポンサーの獲得や大規模な投資につながりました。
さらに、代表チームの主力選手5人は2019年、男子との待遇格差が性差別にあたるとして米国サッカー連盟を提訴しました。
その結果、2022年にはW杯の報奨金などで男女の待遇を同じにする協約が結ばれました。
こうしたピッチ外での行動も、投資拡大に影響を与えていると考えられます。
女子スポーツの躍進とさらに影響が広がるように
米女子バスケットボールリーグ(WNBA)のスター選手、ケイトリン・クラーク選手(23)の活躍も、大きな影響を与えています。
男子プロリーグ(NBA)のトップ選手に匹敵するほどのロングレンジからの3ポイントシュートなど、その圧倒的な攻撃力が魅力です。
2024年にドラフト全体1位でフィーバーに入団すると、チームの観客動員数は前年比で319%増加し、リーグ全体の動員数も過去22年で最多となりました。
女子スポーツの報道やスポンサー支援の少なさも、近年改善が進んでいます。
女子トップアスリート4人が設立した団体「TOGETHXR」によると、2019年時点で女性は世界のスポーツ参加者の約44%を占めていたにもかかわらず、メディア報道は約4%、スポンサー支援は全体の1%にも満たなかったといいます。
しかし、国連ウィメンのデータによると、30年間5%にとどまっていた女子スポーツの報道割合は、2019年以降に3倍に増加し、2022年には16%に達しました。
この成長が続けば、2025年までに20%に達する可能性があると予測されています。